東京に四月に雪が降った日に

水道橋博士のツイート見てたら、『道』見てたんです。なんでこの人は見てたんだろうと思ったら薄々想像していた通り『浅草映画研究会』の収録のためだったよ!『道』のTV放映権1~3月切れてたって話あったから4月以降にどっかが権利買ってやるんだろうなと思ったら洋画★シネフィル・イマジカでやるの確定ですよ!(『浅草映画研究会』はシネフィル・イマジカのその月イチオシ作品について語る番組なのです) 私はシネフィル・イマジカっこなので、きっとフェリーニの他の作品もやるに違いないのでとっても嬉しい。DVDもらって見たって博士がつぶやいてたから『8 1/2』もやるんだと思う。個人的には『そして船は行く』きてほしい、ピナ・バウシュ作品6月に見に行くのにまだこの映画見てないので。大学時代、めったやたらには動かなかった私が自分で大学以外まで出向いて講義聴きに行った中条先生のフェリーニや『道』トークが見れるのもすっごくすっごく嬉しい。CS環境にある人は早急に整備した方がいい。
浅草映画研究会のサイト
http://cinefilimagica.com/asaken/index.html

以下博士のツイート(http://twitter.com/shakase)転載(原文ママ

フェリーニの『道』をDVDで。学生の頃から何回か見ているわけだが11年ぶりだ。日記を調べたらわかる。WOWOWで鴻上尚史さんと映画番組をやっていた頃に見て以来。あの時は清水ミチコさんが推薦した。

『道』を見るとターザン山本を思い出す。〜『道」は私だ。ザンパノは俺だと大声で叫びたくなってくる。ラストシーン打ち寄せる波を前にしてザンパノは大の男なのに叫泣する。人(男)は愛を失ったと実感した時初めて自分の中に愛が実在したことの意味を知る。それでは遅い。いや遅いからいいのだ。

「ザンパノは私だ」はターザン山本の引用。ターザンは何度も道について書いているが「映画で泣くことは決してないのに「道」だけは何回見ても涙が出てきそうになる」とまで。あのひとでなしが涙……。そしてターザンの私生活を見ればザンパノは貴方だと言いたくなる。

ラジオ終了後、青山移動。浅草映画研究会の収録。今回はフェリーニの『道』をテーマに。いつもより予習不本意なので楽屋で短時間に資料漬けを集中的に。90年のテーミスの殿の評などが「なるほど!」と点と点が繋がり発見があり、ちょっと興奮。

本番、中条省平先生は『フェリーニ・オン・フェリーニ』の訳者で専門家、解説が一気に映研らしさが満溢。そこから縦横に広がる映画論は、ON AIR出来ない部分多々あるのだがノーカットを自分でも欲しいほどスイングした。

「『道』は私だ。ザンパノは私だ。」という感想は、「私は映画だ」というフェリーニの発言を引用してしまうものだが、ザンパノ、ジェルソミーナは林家ペーペーだ、という今日の相方と僕しかわからない話は全くもって当たっている。

菊次郎の夏』が『道」を無意識になぞっているのも、今日、過去の文献を見ながら、殿の発言、初めてみた年代などを調べると、まったくもって正しい指摘だと内心思うのだった。

「道」を皆、即、感動したと言うが、少なくともジェルソミーナの描かれ方を女性の視点で見るとザンパノは単なるひとでなしなのだ。しかし、その存在の理不尽さを謳いあげているからこそ、だから「映画」なんだ!って餌を巻きつつ結論まで行きつけて良かった。

最後のところ、もう胸のつかえがすっとした。あれで泣けるとかどんだけ身勝手なんだよ、と、常々しらけていたので、というか、『ヴァージン・スーサイズ』が身につまされて泣ける人間が『道』で泣けたらそれはそれで節操ないので私はその姿勢でいいと思うんだけども、「皆、即、感動しすぎだろ」というツッコミを入れてくれる人がいただけで永年の罪悪感から救われた気分です。更にターザン山本とか林家ペーパーとか言ってくれたので、サブカル学士としてはすごくわかりやすくなってやっと理解できたんだけど、そうなるとものすごいもうほんとろくでもない人の話だということも身に染みてわかってきました。
常々感じていた北野武フェデリコ・フェリーニの共通点について語るのにもこれ以上のキャストはいません。なんというか、小屋の匂いだよね。フェリーニの愛してやまないいかがわしい小屋の匂い、あれを北野武も愛してやまないんだろうし、だから通じてるんだと思う。そこらへんもガッツリ語ってくれるんだと思う。
そして、倉敷の紙問屋のボンボン、水道橋博士がどういうアングルで五輪まわりを絡めて攻めてくるのかも大変期待しております。
とにかくもう首が折れるほどうなづきっぱなしでノーカットが見たくて見たくてたまらないのですが、とりあえず首が折れない程度に長くしてオンエア待ちたいと思います。

五輪まわり。そうだ、私は高橋大輔の『道』を見て、水道橋博士がどう思ったのか感想を知りたかった。とても知りたかった。同郷のフィギュアスケーターをどう見たのか知りたかった。帰国してから博士のツイートやブログは掘りつくしてみたつもりだけど、何か言ってたのかちょっと見つけられなかった。トリノからバンクーバーまでの間はちょっこしサブカル休業してフィギュアスケートヲタをやってみたんだけど、私の「サブカル」という地元の人達が4年間打ち込んできたものをどう評価するのか知りたかった。トリノ五輪が終ってから、「これからバンクーバーまでは高橋大輔に操立ててますから!」と公言していたけども、それは本当は「フィギュアスケートに操を立ててきた」ことで、そう決心した理由も極めてサブカルらしく、リリー・フランキーがアイドル追っかけに1年捧げるつもりだったのが3年だか5年だかになってたっていう逸話に基づいていたからで、バンクーバーが終ったら、今までハマってきた競馬や麻雀のようにすっぱりフィギュアスケートからは足を洗おうと思って突っ走ってまさか行けると思っていなかったバンクーバー五輪現場まで辿り着いていたわけで、だから私のフィギュアスケート卒論みたいなものがどう博士から評価されていたのか怖いながらも知りたかった。指導教官、中条先生と博士と玉ちゃんなら、どう評価されても私は本望です。中条ゼミとかマジで入りたくて学習院受け直そうかとちょっと思ったくらいだもの、これ以上ない豪華メンバーに斬られるなら悔いはない。

この人たちのことだからスルーはしないと思うんだけど、編集でカットされてたら悲しいなあと思う。だから今のうちにシネフィル・イマジカさんの編集担当さんにこの気持ち伝わらないかなと思ってブログってみました!*1

私が見て泣けた『道』は本当に高橋大輔バンクーバー五輪での演技だけで、あれはでも『道』に泣けたのか自分がこの人に4年間必死に伴走してきたことに感極まって泣けたのかよくわからず、ただ後半の連続ジャンプに差し掛かるあたり(ジャグリング?お手玉コイントス?みたいなマイム終った直後あたり、にぎやかしにハープとかピッコロ入ってるところ)の音楽と大ちゃんの共鳴がすごくフェリーニで、フェリーニの愛したサーカスや小屋の匂いで、『道』というかフェリーニ、『8 1/2』のラストシーンや『ジンジャーとフレッド』で大量の小人使った乱痴気騒ぎを撮ってるんだけど(時代的に小人プロレスとか小人楽団とかやってるミゼット芸人をああやって扱っていいギリギリだったように思う)、ああいうフェリーニの原風景とか、更に『天井桟敷の人々』あたりまで遡る「小屋」の猥雑で人いきれでムっとして、でもその場にいてめくるめく強烈な快感に卒倒しそうなほど酔いしれる雰囲気みたいなの感じて、あそこらへんがものすごく好きで陶酔してて、それがいきなり『道』というかジェルソミーナのテーマが鳴ってそっちの世界に戻されるとなんかもったいないなと思ってた。
なんでああいうことできるんだろと考えてたら、その後、本人『道』の映画見てないと知って納得しました。見なくていいと思ってたし、見てたら混乱してたろうなとも思ったし、何より見てたらあんな風に『道』からはみ出て(でもフェリーニの枠内には収まって私の心を揺さぶるように)滑ることができたかどうか疑問だ。見て研究して近づけていくタイプの人もいるだろうけど、彼はあきらかにそれよりただ音楽に身を任せていればいいだけの人だし、勝手に滑ってほしいし、そもそも使ってるのが劇伴音楽なんだからストーリーの意図には完璧に沿っているわけだし。それであの衣装がその世界観のノイズにならないことも良かった。私、今までの高橋大輔衣装で『道』五輪・ワールド仕様が一番好きかもしれない。あの衣装ほんと最高すぎる。『eye』の五輪衣装はなんかステンドグラスっつうか切り子細工みたいでわかりやすく頑張って派手でそりゃもう舞台映えするだろう感じですけど、ドレスダウンの難しさをちょうどいい案配に落とし込んだ『道』の方がすごい好きつか結論としてはオリーブ少女・森ガールラインに乗っかってるんでただ好きなだけだと思うんですけど、まあとても好きです。

で、私がフィギュアスケートからきっぱりすっぱり足を洗って故郷のサブカルに戻ろうとしたかといえばそうでもなくて、バンクーバー終るまで終るまで、ってもうつらくなってきて見るのちょっと嫌になってきても義務感にかられて見ていたフィギュアスケートですが、バンクーバーから帰国後、気が抜けた状態で見てたらなんか普通に楽しくて、「これ一本!」って感じじゃなくなったら逆に気楽に面白く見られて、あ、趣味にできそうと思った。趣味の枠を超えて意味のわからない打ち込み方してきたけど、なんかそういう所から一歩ひいて縁側でお茶をすすって原節子がいて笠智衆がいて杉村春子がいて「いいわねえ」「いいね」「いいかしら」「いいんじゃない」的な楽しみ方ができるようになりそうです。
もしくは卒業と思ったら就職口がなくてとりあえず留年かなと思ったけど単位はとっちゃったからなんか研究生で残してください的な感じ?
見たいものはだいたい見たような気もするんだけど、『道』って五輪とワールドで合わせ技一本、みたいなとこあったじゃないすか。そうじゃなくて一本勝負で一本とったのを見たいというのはあるので*2、その大舞台一本だけは私もあと一年付き合うくらいはしてみようと思った。

*1:twitter非公開です

*2:テッサ・ヴァーチュー&スコット・モイアーの『アダージェット』がまさに一本勝負での一本勝ちであった。私のバンクーバー五輪ハイライトはこれでした。ずっといろんな『アダージェット』探しては聴き比べ今でもするくらいに