いい試合だった

中田英寿がずっと泣いてるのだから、中田が泣いたのだから、だから、それで、全ていいじゃないか。と、私は思った。他の人は知らないけど、私はいい試合だと思った。ずっと読んできた漫画の最終回のような、そういう試合だったから、見ててよかったと思った。

あの中田が人目をはばからず泣いていた。なんとか隠そうとしていたけど結局隠し通せず泣いていた。

あの姿を見ても、他の人は怒ってたり落胆していたりするのだろうか。一番悔しいのはどう見てもあの人じゃないか、あの人達に対してネガティブな反応を起こす気には私はとてもなれない。

お疲れさまでした、と卵焼きなんかを作って待っててあげたいです。投げつける卵あるならくれよ、料理するから。

本当にお疲れさまでした。私達が強くなるために必要な経験を積ませてもらって、ブラジルの皆さんにも感謝したい。

悔しいのは見てるだけの私達よりそこで戦った選手達の方が何十倍も強いに決まってるじゃないか。彼等の目標がさっき終ったのだから、それで負けた理由だって明らかだったのだから、前向きな負け方だった。これからは何が起こっても奇跡じゃないし、そもそも「奇跡」など言う方が失礼なんだと、私達にもそういう意識が必要なのだと思います。

W杯は戦争じゃない。私は戦争が嫌いです。ピッチの上は戦場かもしれないけど、ロングホイッスルが鳴ったあとのそこはもう戦場じゃない。

中田が涙を流した場所はもうその時点では戦場ではなかったから、だから中田はあれほど泣けたんだ。あの涙を流した時間や場所を「戦争」に含めないでほしい。

私知ってるもの。ああいう涙を流す時間や場所のこと知ってるもの。本気で自分の何もかもを晒してぶつけて戦った人間の精魂尽き果てた後の涙を「戦争」に含めないでほしい。

私は「戦争」が嫌いです。