私にはよくわからない。

木下あいりちゃんのことを検索していたら、ご遺族支援の会のブログがあった。
http://smallwind.blog.shinobi.jp/
広島高等検察庁に極刑をのぞむハガキを送る活動をされている。
性犯罪は嫌だけど、死刑も嫌だ。私はどうすればいいのか。
私は、木下あいりちゃんの御両親の英断に感謝しておりました。私も性犯罪被害者ですから、私達が受けたことは「いたずら」なのか、「いたずら」で済まされることなのか、なぜ「強姦」と報道してくれないのだろう、なぜ「性的」がつかない「暴行」とされてしまうのだろう、誰を思い遣っての「配慮」なのだろうとずっと不思議に思っていました。「いたずら」とすることによって真に利益を受けるのは誰なのだろう、とずっと考えておりました。宮崎勤の事件があった頃、私の両親が被害にあった女児達が可哀想だ、と泣くのを見て、私は私の身にふりかかったことの意味がわかり、その時にそれは決して彼等には伝えてはならないのだ、と思ってしまって、だから一人でずっと抱えて苦しかったです。
私はどうやってこの世の中を生き延びていくのか考えて、とりあえず頭が良くなろう、勉強したらきっと私には生きている意味があるのだろうと考えて、本を読んで勉強して学者かマスコミの人間にでもなればいいのではないかと思って、勉強はしたけれど、学者になる素質がなかったので、大学生で学者の道は諦めました。いわゆるフェミニズムの学者の人達をみていて、これは私が求めているものではないなと思ったし。マスコミの人間も無理でした。マスコミの人間になるために必要な体力や社交性が私にはなかった。
少女だった頃に殺されず、この歳までなんとか生きてきて、それでだいぶタフにはなった。タフにならなければ生きてこれないと人間はタフになるもんだ。

日本の極刑が終身刑だったら、私はこの運動に参加してハガキを書くことくらい厭わないでやるのですけども、どんな人間であれ、人の死を望むのは、私は嫌です。人を呪わば穴二つ。私は一緒に墓穴に入りたくはない。

結局、犯罪被害者とひとくくりにされたって、一人一人は違う人間なのだから、わかりあえると思わない方がいいのです。わかりあえない前提で物事を進めないと、感情の行き違いでこじれることが目に見えてる。だって皆被害者なのだから、被害者意識をふりかざす権利があって、ただそれを被害者同士でやってしまうと泥沼にはまるというのは私は何度か経験しているから、もうそういうのは嫌なんです。

だけど、淡々と自分の考えを綴っていて、それがもし誰かの意識とリンクできたり気持ちを共有できたら、それだったらいいなと、私は私で、誰かの代弁者ではなく、それでいても誰かの心に私の気持ちが届くなら、それが何より嬉しいことだし、私のやるべきことだと思っています。
性犯罪は憎むけど、死刑廃止論者でもある私はこの運動には参加できませんが、他の形で、具体的に言うとレイプ神話を解体するストーリーを提示して、違う側面からサポートできればいいし、私にできることはそれしかないとも思っています。難儀だけど私のやらなければいけない仕事であります。20代最後にとりかかる仕事として、まあ不足はないかなと。

なんかさあ、だってさあ、私の周りになんかレイプされた人なんていっぱいいるのにさあ、強盗被害や空き巣被害と大して変わらん比率でいるのにさあ、どうして強盗や空き巣にあった人はおおっぴらに被害にあったことを言えるのにレイプにあった人はおおっぴらに言えないのかなあって純粋に不思議なのね。そこらへんに転がってる犯罪じゃんね。どうしてあたかもいないように見えないように扱われて、仕方なく報道されざるを得ない事件の時には仰々しく扱われるのかなあ、そんな特別なもんじゃねえだろ。なんかイライラすんの。そういう特別扱いが私達を余計苦しめることがわかってねえんだろうな。だって、私だって、その「特別扱い」がゆえに更に自分が苦しんだってこと気付くまで時間がかかったもんな。私達は透明人間じゃないのです。誰かに都合のいい時だけ存在しているわけではなく、いつだって死ぬまでそこにいるのです。世間様の都合がつかない時にケアされなくて(この状態がデフォルト)、そういう時に自分で勝手に死んじゃう人がいるのが何よりつらいです。そういう人が死にたい気持ちだってわかるから、大きな声で「死ぬな」と言えないのがとてもつらいです。交通事故がどこかで毎日起きているのは想像がつくように、性犯罪もどこかで毎日起きていて、それは大概の場合ニュースにすらならない、それほどありふれたものなのに、他の事故や事件とは違うspecialな仕組みが働く理由を私は知りたいです。

この映画はかなりうまいことやっとると思う。


渚のシンドバッド

渚のシンドバッド

  • 出版社/メーカー: 東宝
  • 発売日: 2004/07/30
  • メディア: DVD