AU REVOIR MA PETITE FILLE

眠れないので結局書きます。
昨日『エコール』という映画を観に行きました。
http://ecole-movie.jp/
端的に言うと、極めて川端的な世界観、しかし決して川端の手には届かない世界でした。
この映画でシネスコサイズを選択したというのは、小説家にとっての文体の選択のようなものだと思うのですけど、確かにシネスコサイズである必然性があったと思う。映画館まで足を運んで正解でした。
かつて私はこの映画のトポスに在籍したことがあって、この映画を撮った女性監督もやはり在籍していた経験がある方なのでしょうけども、私は今このトポスを監督と同じ目線で俯瞰で優しく見守ることができて、そこにいる少女達だけではなく教師にも老婆にも優しい気持ちで接することができて、長年に渡って膠着していた自分の中の『少女』との混沌とした関係には既に決着がついていたことがわかったのでよかったです。
あのトポスにいた頃は「ここから一刻も早く抜け出たい」という感情と「ここから出てしまったらもうこのような感性は忘れてしまうのだろうか」という恐怖に苛まされて苦しかったのですが、そのような感性を忘れずに大人になることができてよかったです。
少女達を守るためにあえてほとんどの説明を省いた舞台設定にした作り手の優しさが伝わってきて、私もこのように守らなければ、と思いました。このバランスとるの難しいです。
匙加減一つ、塵芥一つで下世話なものが混じってしまうので、一つ一つの要素を丁寧に取り分けて少しでもノイズになり得るものはピンセットでつまんで排除していくような細かい作業を延々とやらないと作れない映画だったので、その愛情に頭が下がりました。
私の「その日」は週に一度のピアノ教室の日で、鍵盤が異常に冷たくて、先生の声は遠くで微かに鳴り響いてて、自分の体温が消え失せたような感覚だったことを忘れていません。私は今でも忘れていませんし、これからも忘れませんので少女の皆さんは安心してください。
あ、あと編集のリズムが適切でした。編集は監督がやったのかしら。違う人がやってたとしたら、このチームはよくまとまってるいいチームだと思います。撮影監督の人もいい仕事してたと思う。
原題が『INNOSENCE』で、日本で同名の映画があるということで邦題が『Ecole』(←仏語で『学校』)になったとのことですが、『イノセンス』って誰のどんな映画だったっけ?と調べたら押井守攻殻機動隊の続編だった。
そりゃ確かに邦題変えないといけないわ。世界観壊さないようにあれだけ慎重にやってたもんが一瞬で吹き飛ぶもの。両方好きな人もいるだろうけどさ、しかもけっこういそうな気もするけどさ、同じベクトルで好きではないだろうよ。