やりすぎニコライ

気付いたら、NHK杯の全カテゴリーにニコライ・モロゾフさんが選手を送り込んでいて、この節操のなさ改め神出鬼没加減はもはやご当地キティちゃんと並ぶものがあるなあと思いました(自分自身の衣装の数含め)。日本でデーブ・スペクター(埼玉県民)みたいな扱いされる日もそう遠くない。
どこであの人は着替えているんだろう、とか、男子SPアイスダンスFD女子FSとつまっている時に教え子がたまたま男子の最終滑走かつアイスダンスの一番滑走だったんで衣装どうなってるのかしら?と地味に気にして見てたら着替える時間なかったみたい。女子までの間には着替える時間あったみたいですけどほんとどこで着替えてるんだろう、男子更衣室とか入ってんのかそれともトイレとかで着替えてんのかもうバックステージで生着替えなんだろうかなど気になりすぎてしょうがないです。荒川さんが首かしげの謎とあの人の振付けはラストがみんなステップからスピンなのはどうしてかという謎を解明してくれたので、次は衣装早着替えの謎を解明してくれることを期待してます。

とだけ書くのもなんなので、モロゾフ門下の皆さんについてのNHK杯観戦記を書こうと思います。

・ペア
ボロゾジャール&モロゾフ組:見てないので何も言えん。

アイスダンス
リード姉弟:滑り自体はジュニアレベルかなあと。ただし非常にレベルの高いジュニア。ノービスからいきなりシニアに突っ込まれてレベルの高いジュニアっぽい滑りというのはかなり有望だと思うのであと10年は日本代表として現役で戦ってほしくてそれをずっと見守っていきたいです。ODがロシアンフォークじゃなくてギリシャの踊りだったのちょっと面白くてよかった。ロシアルーツじゃないカップルでもけっこうロシアンフォーク使うのが多くて、寒い国の踊りだからスケート映えするのかもしれないが、この傾向が長く続くとタンゴとかラテンが課題だった過去2年のような気持ちになるのかしら?とちょっとだけ思ったので、白い衣装がよかったなあと思いました。ちょっとこういう衣装って何かの時のチャイト達を思い出すなあと思ってたらキスクラにチャイトがいました。キスクラにチャイトがいました。サフノフスキーはいませんでした。サフノフスキーはいなかったのです。NHK杯でチャイトがいるのにサフノフスキーがいないのです。NHK杯といったらデンコワ&スタビスキーとチャイト&サフノフスキーがくるもんだと思っていたんだったなあ。しんみりしました。男子の時にもチェンジャンが滑っていてなんで本田は解説なんだろう、と思ってしまいました。

フレイザールカニン組:NHK杯アイスダンスで「Time to Say Goodbye」ときたらアニシナ姐さんの全身タイツなわけで。あの時の曲編集は素敵だったんだなあと今やっとわかりました。リンクサイドにいるはずのミュリエル先生を必死に探してしまいました。この際ミュリエル門下生だった宮本賢二先生でもいいやと目線送りましたが気付いてくれませんでした。ショートサイド一番上の一番端席だとやっぱりアイコンタクトは難しいですね!賢二先生は曲の使い方繋ぎ方うまいよね、さすが元アイスダンサーって感じで。というかモロゾフ大先生はどうして元アイスダンサーなのにあんなことになるんでしょうか。曲編集で、ああもうこれ誰が振りつけたんだかすぐわかるわ、つうのも才能なんでしょう。ただ、アイスダンスという競技でモロゾフ印が入るとシングル競技の時に比べて曲編集も雑さが際立つなあと思った。もったいなさが倍増するというか。アイスダンスは特別だからシングルやペアと同じ手法とって同じようにやっちゃいけないんだと私は思うのだけど、私がアイスダンスに思い入れが強いからだけなのかもしれません。キスクラにチャイトが(ry

・男子シングル
高橋大輔:SPのヒップホップスワンレイクはノーミスじゃないと見ている方が乗り切れないめちゃくちゃ難しくてプレッシャーのかかる難プロなんだということがわかりました。3Aのステップアウト以外はほんと良かったのに自分の心に正直でいるとスタオベができなくて私が悔しかったです。あんなにステップすごかったのに、ほんのちょっとの乱れで盛り上がりきれないんだなあと。確かにこりゃSPに4-3入れるどころのものじゃないなあとほんと思った。ただ、アクセル失敗でムっとしてる顔ってキム・ヨナさんの時も思ったけど、見ていてワクワクします。だってもっとできるのに!って自分で自分に怒っている顔。はたから見ると充分に難しいことやっているのにそれでもちょっとの失敗でもう全て台無し!と自分自身で思っている顔。その顔に一番乗れた。スポーツとしてはそれほどひどいミスじゃない、だが作品としては失敗してはいけないものなんだ、と見てる側もやってる側も思えるプログラムというのはまさしくフィギュアスケートの醍醐味がつまっているプログラムだと思う。キスクラにチャイトはいませんでした。アイスダンス以外の時はチャイトはいませんでした。歌子先生がいました。歌子先生がいると落ち着いていいなと思いました。
FSロメジュリの方が生で見てびっくりしました。これはすごいや。こっちはジャンプ失敗しても特に気にならないプログラムだった。力強い曲に負けない力強い滑り。プロコの方が踊りやすいけどチャイコを滑りこなせたらすごいことになる、と前日に話していたので(私は一人観戦でも途中で我慢しきれなくなって思ったことを隣の人につい話しかけてしまう)、あーぜんぜんこれ見てていいや気持ちいいや、って思っている間にもってかれて、ショートサイド最後列からSlSt入る直前のロメオ見てたら、すっと「ロメオが私に会いにきた」と思った。何の衒いもなく自然に思った。バルコニーにいるジュリエット気分になった。そのくらい音楽と滑りに宿るストーリーにひきずりこまれた。ヴェローナから追放されるロメオを見ていて何もできないジュリエットみたいなそんな意識が乗り移ったままSlSt見てて気付いたら終わってた。すごかった。
EXは正真正銘30代bachelorette(よくわからないけど現在の一般的な尺度でいうと「負け犬」って言葉があてはまるんですか?)である私がこのプロを生で見ている時はなぜかこの人は私の眼前でいきなり視界から消える。DOIの時も今回もなぜか私の真下で失敗してる。このプロこそ一番ノーミスを見たいんだけどなあ。次これ見られるのいつになるんだろう。もしかしたらもう生で見られないのかなあ、今季全日本は行くけどMOIは行かないし、基本的にアイスショーにまで回す金ないから行けないし、行こうと思えるアイスショーもDOIとFOIくらいだしなあ。あ、でも、DOIの時は失敗したら台無しじゃん、みたいなプロに思えたんだけど、今回は特に気にならなかったです。意外でした。スケーティングの素晴らしさを最大限に堪能できるプログラムなので、各プロにまつわる思い出や思い入れ抜きで考えてみると、高橋さんのプログラムの中でラフ2とバチェラレットが私好みなプログラム2トップです。

・女子シングル
安藤美姫:3Sですら危うい安藤さんを初めて見ました。6分練習の時、いつだって誰より目をひく安藤さんがいなくて驚きました。レピストと安藤どっちがどっちだ?と混乱するような事態になっててほんと驚いた。コストナーが異様に一人だけ輝いてる6分練習、あのコストナーに弾き飛ばされるように軌道を譲る安藤美姫、珍しいものを見ました。EXのHurt見てて、めっちゃくちゃこの曲が似合っている安藤美姫にも驚きました。身体の状態は最高潮なのにそれと同じくらい心の状態が絶不調っていう人を見るのは珍しい経験でした。普通メンタル落ちると身体の状態も最悪になるから、キレキレの身体にまったくどうにもならない心が入るとこういうことになるんだ、とちょっと感動した。心技体って本当どれが欠けてもダメなんですね。
私は、彼女の場合は、自分の気持ちに正直にスケート滑っていいと思うんです。特に今季のプログラムは「サムソンとデリラ」と「カルメン」でどっちも一人の女性の物語を彼女は滑るんですよね。誰にだって嬉しい時も楽しい時も悲しい時も悔しい時も怒っている時もあって、それはデリラにだってカルメンにだってもちろんあるんです。その時その時の彼女の気持ちにリンクしたデリラやカルメンを滑ってもおかしいことは何もないです。デリラは家族のため国のために戦う女性で、愛すべき生まれて育ってくサークルを守るために身体を張って危険に立ち向かった、ってくらいの筋書きがあるだけで、デリラのパーソナリティについては解釈の自由度は広いのだし、カルメンだって一応筋書きはあるけど、人間性の深みの出し方は人それぞれに解釈できるので、美姫ちゃんが好きなように感じるように滑っておかしくなることはないんですよね。ここにはちょっとニコライの戦略だけじゃなくて優しさを感じました。彼女自身の人間性をさらけ出していいプログラム、とりつくろわない、とりつくろえない、ならもうさらけ出してしまえ、と開き直れるといいんじゃないかなあと思ってたけど、実際もう失うものはないから開き直ってくれて、全日本はすごいことになるんじゃないかと、逆に楽しみになってきました。GPF出られなかった女子選手が五輪やワールド代表に入るっていうパターンできつつあるし。私は、美姫ちゃんが開き直って全てさらけ出しちゃえ、みたいなスケートを見せてくれた時、そこにはパワフルでセクシーなだけじゃなくエレガントな雰囲気も身に付いてきている気がするんです。なんかこう長野五輪の時のルルみたいなものが見れそうな気がするんです。(逆に全日本はなんか真央ちゃんの方が心配だ、美姫ちゃんくらい試合で不安がそのまま出て失敗すると失うものはもうないから開き直れそうだけど、真央ちゃんも今季ずっと不安そうなのになんとか勝ち続けているから、ガス抜きができなくてどこかで大爆発がくるんじゃないかと不安だ)(安藤美姫というスケーターは自分の人生のハイライトを全てリンクの上で見せていて、なかなか得難い面白い個性だなあと思っています)
あ、コーチが彼女の祖母のことを明かしたのは彼女を守るために当然だと思う。ジャッジだって人間だ。特にこの競技はジャッジの人間性に成績がかかる比重が非常に高い。主観が入らないことはまずない。それで現在の世界女王があんなことになって「なんなんだよ」と思っているところに理由を説明するのは当然だ。ジャッジだって人間なのだから、理由がそういう理由なら「じゃあまあしょうがない」とある程度の理解を示す人もいるだろう。示さない人も勿論いるだろうけど、世界女王に相応する評価に応えられなかったこういうイレギュラーな事態がどうして起こったのかは明らかにしておいた方がいい。

長くなっちゃったけど、別建てにするのもなんなので、他に印象に残ったことも書いておきます。
・南里くんの「月光」がほんとよくて。今年はスケーティングも格段に進歩してて、大ちゃんとも小塚くんとも違う良さ、南里くんのスケーティングは製図用の硬い鉛筆でサーっと線をひいたような綺麗なスケーティングになってて、figureという意味の中の「図形」にピッタリだなあと思った。
・ヴェルネルがほんとよかった。私が男子SPでスタオベしたのは南里くんとヴェルネルだったのでした。
・というか、男子表彰台の3人全員スケーティング綺麗なんでそれぞれの良さを堪能させていただきました。
コストナーアイスダンス含め、ディープエッジの音がよく聞こえてウハウハでした。ディープエッジャー多かったなー。
ゲデヴァニシヴィリのSlStはSlStといっていいのだろうかというくらい大胆に蛇行してました。サーベンタインとまではいかないんだけど、アイスダンスのミッドラインステップくらいのものを一人でやってたような。
・スケーティングやステップの軌道がよく見える席でウハウハでした。スタンド最後列でよかった!
・シズニーはいつも音楽も衣装もセンスいいよね。女子はアレな大会でしたが、シズニーがシズニー比で出来がよかったので印象に残りました。なんて上品なウエストサイドストーリーなんだろうと。
・キャリエールもシズニーもアメリカ人なのにアメリカ人らしからぬ落ち着いた雰囲気でした。キミーもエミリーもジョニーもライサチェクも生で見るとアメリカ人らしい華をもった選手なんだなあと思うのだけど、この二人はまたちょっと違う感じ。そしてそれは私好み。
ダビドフよかった。ソーヤー面白かった。ドブリンが火の鳥だった。ロシア勢がタラソワんとこの子とミーシンとこの子だったとあとで気付いた。
・男子ってそういえば4位誰なんだろう?とエキシビになって気になっていたらアボットだったと。SP最下位なのにいつの間にそんなとこまできてたんだろ。12位から4位って新記録じゃないの?8番も順位あげてる。
・オーバースドルフの二人がとにかく光り輝いてました。ボナリーとキャンデロロみたいなことやってほしかったなあ。
・奈也ちゃんは牛タン食べたかな。頭の中が牛タンでいっぱいだった奈也ちゃんが奈也ちゃんらしいなあと思いました。
アイスダンスがハイレベルな試合過ぎた。カー姉弟、東京ワールドの時に比べて異常にうまくなってた気がするんですが、プラトフの力量なんだろうか。姉ちゃんが弟持ち上げるリバースリフトのインパクトはすごかった。
・ヴァーチュー&モイアーのFDいきなりツイズルの求心力・訴求力たるや。一気に物語に引き込まれた。あの「シェルブールの雨傘」の男声♪モナムール(愛しいひとよ)女声♪ジュテーム、ジュテーム(愛してる、愛してるわ)の繰り返しが野暮に聞こえなかったというかあのくらいくどい方がよいのかもとすら思った。生じゃないと多分そういう気にならなかっただろう。この組も3月に見た時より雰囲気づくりがうまくなってて。「シェルブールの雨傘」のリメイクをみているような気になりました。
・それに対してデロベル&ショーンフェルダーの「ピアノ・レッスン」はあの映画に忠実でそれも大変に良かったです。テッサはカトリーヌ・ドヌーヴと重ならなかったし、スコットもあの主人公とはまた違うキャラクターに見えましたが、イザベルとホリー・ハンター、オリビエとハーヴェイ・カイテルはしっかり重なって見えました。特にオリビエが曲がなっている間はあの映画のあの人にしか見えなかった。頭の中でアンナ・パキンも踊ってた。
・私、「ピアノ・レッスン」の楽譜もってるんですよ、実は。なんだかんだ言って「シェルブールの雨傘」も「ピアノ・レッスン」も好きな映画だと気付かせてもらいました。お母さんの近くで浜辺で踊り狂ってるアンナ・パキンが演じる娘の姿がやたら印象に残ってるんだけど、北野映画もそういうとこばっかり印象に残ってる。私、そういう風景が大好きというか原風景になんかあるみたいです。
モロゾフのやらかした「タイムトウセイグッバイ」に文句はつけたが、プラトフがやったカー姉弟の「カルミナ・ブラーナ」をサンプリングしたヒップホップ?テクノ?なんかそういう感じの曲はすっごい面白くて大好きです。アニペーファンとして、モロゾフプラトフの間にある壁が気になりました。同じくタラソワのところでアシスタントやってたのにね。カー姉弟なんてアニペーファンがもっともうるさいだろうリバースリフトまでやってたのにアニペーファン黙らせるどころか興奮させたもんね。これだこれだ!って。あの恋愛感情が全くない雰囲気までそのままでよかったです。カー姉弟の場合、パートナーに恋愛感情があったら非常事態だけどな。
アイスダンスの最終組の6分練習が個性豊かで笑えた。ホフロワ&ノビツキーの後ろをヴァーチュー&モイアーが滑ってる時、初々しいティーンエイジャーがぎこちなくデートをしてたらなんかすごい格好の人達がいてびびってます、みたいな雰囲気で面白かった。そんでおかしな格好をしている人達に職務質問しにいきそうな警官とか学校の先生(担任と生活指導)がいる、そんな日曜日の吉祥寺みたいだった。
・ヴァーチュー&モイアーのエキシビのマイフェアレディの音源ってもしかして去年の小塚使用音源と同じものだろうか。両方ともすっごく好きなエキシビなんだけど、小塚くん、あのエキシビ見れたの私は去年のNHK杯のテレビで一度っきりだった。JOのガラとかはカーウォッシュじゃなくてこっちを見たかった。