こどもから少女へ、少年から大人へ

GPF見た。高橋&真央の2位コンビ(この人等一体いつから同じ順位なんだ?と遡ってみたら去年のNHK杯からGPF、全日本、世界選手権、そしてまたGPFとずっと一緒だった)が大変印象に残った。
中野さんはどうしてPCSでないんだろう、こっちがイライラするが、会場の人もイライラしてたし、それでもあきらめず戦う中野さんがやっぱり好きなんだけど、彼女の努力や魅力はもっともっと報われていいはずだ。スペイン奇想曲のラストのスピンにはびっくりしたなあ。ビシーって!スピンってこういう表現手段もあったのかと思った。ドーナツスピンって別名スワンスピンとかバイウルスピンといわれるものだから、白鳥みたいな表現をするもんだと思い込んでいたけど、その認識をスパっと突き上げた手が切り裂いた。あの手は白鳥のなよやかな首の動きも表現できればナイフを突っ立てるような張りつめた表現もスピン中にできるのかと。中野友加里かっこいいなあ、とちょっと興奮しました。
真央ちゃんはここまで夢を見ているようなふんわりとした世界を見せることが個性のスケーターだったんだ。私は彼女のスケートでみせているものが彼女のもつ個性とか世界観だったと、今まで、気付かなかった。あのふわっとしたスケーティングはまだ技術がちょっと足りないからか意識が足元に向いてないからだと思っていた。でも違った、本当に申し訳ないほどにこちらの見る目がなかった。あれこそが彼女の表現力だった。彼女のあのちょっと宙に浮いているようなスケーティングこそが彼女の表現で魅力で個性だったんだなあって。大人になったら地に足が着くようなスケーティングをするんだろうと思っていた、でも彼女は違う。彼女の表現の方向性は私達を彼女の浮かんでいる夢の世界へ招待するようなものだった。気付くのが今更すぎる。彼女のスケートを見ていて夢心地になる時こそ彼女の調子がよい時なんだと初めて気付いた。中野さんの3Aは切れ味がよくて軽妙で速くて見てて爽快だ、真央ちゃんの3Aは3Aとは思えないほどに柔らかく浮いている。3A一つでここまで個性が出るのかと思った。女子の3Aという特別なジャンプは跳ぶ人の個性がいちいち出ているなあ。誰の3Aも似ているということがない。
去年のSP、浅田真央安藤美姫が一緒に滑る時、夢の世界の住人と現実の女がそこに立っている生々しい迫力の落差が激しくて、夢はちょっと弱いなあ、いつか人は夢から醒めて現実に戻るものだ、と感じていた、そしていつか浅田真央も現実の迫力を備えるだろうし、その日こそが覚醒の日だと思っていた。
でも違うわ、浅田真央の覚醒は自分の持つ夢の世界にもっともっと多くの人をとりこんでしまって現実がそこにあっても夢から戻れないくらいの強度が彼女の「夢」に備わった時なんだわ。自己実現とかそういう目標をかなえるための夢じゃなく、本当に純粋にただぼんやりと見ていて幸せになれる夢。それが浅田真央のスケートなんだ。彼女がつきつめればつきつめるほど純度の高い夢の世界へ私達は連れて行ってもらえるのかと思うと、確かにそんな個性は今までスケートで見れなかったなあと思う。タラ・リピンスキーは無意識にそれをできる子どものうちに金メダルをとって子どものまま引退してしまったけれど、やっと子どもから少女になった浅田真央はきっと、大人になっても夢を見せ続けてくれる。彼女の世界観はこれでいいんだと思う。

高橋大輔のスケートについては私は客観的には語れないや、でも、なんだ、いいじゃない、と今回のフリー見て思った。本来できるであろう「高橋大輔らしいロミオとジュリエット」にはまだまだ辿り着いてないけど、それでも着実にそれを見られる日が残りの試合でくると確信できた。あの音楽でそれはやれるんだろうかと不安だったけど、やれるんだろうなと思えた。きっと、彼は、今季までしか嘘をまじえない純粋な少年の心の動きを本当にみせることはできないだろうと漠然と思っていて、ロメジュリやるなら今季しかないと思っていて、だから、私は、本当に今季ロメジュリなんだ!このテーマとじっくり1シーズン付き合えるんだとわかった時嬉しかった。今の彼の素のキャラクターと有名どころで一番近いキャラクターはロメオだと思っていた。でも来季にはきっともう大人の男性になってしまう、ロメオとは遠ざかってしまう、だから今季を逃したら彼のロメジュリは見られない、諦めるしかないと思っていた。お披露目の時はこれで本当にロメジュリやれんのか、と不安になった。
でもできるわ。世界選手権には間に合うと思う。ロメジュリを最後に滑る時、それが彼が少年から大人へ成長する時だと思う。
で、この力強さを全面に押し出した音楽については来季フリーでストイックにボレロをやるためだと脳内変換してやりすごしているので、来季ほんとボレロお願いします!ベジャールの振付に割と忠実だけどやっぱり違うボレロを!これ、スケーターよりコリオグラファーの闘いになると思うんだけど、ジャンルが違うとはいえ名コリオグラファーの名コリオグラフにまっこうからとっくみあってフィギュアスケートやバレエの伝説だけじゃなくて「踊り」というジャンル全体に金字塔を打ち立てて欲しいです。それを可能なタマもってんだからお願いしますよモロゾフ大先生。次もショートでお茶濁すなよ、ヒップホップスワンレイクで挑戦した次は、4分30秒つかって挑戦しやがれよ、コリオグラファーの誇りをかけて。あの音楽を感じるままに高橋大輔が滑るとしたらどういうことになるのか純粋に見てみたい。いつも「音楽を感じて」って言うじゃん、ボレロをどう感じ取るのかほど想像し難いものはないので、それを具現化できそうな逸材つかまえといてスルーはさせねえぞと。