全ての道はローザに通ず
『道』みたよ。
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そんで、『道』はローザの物語だった。ローザが死んでその妹・ジェルソミーナをザンパノが買ったところから映画が始まってるけど、みんなジェルソミーナをローザの妹だと知ってそれがどういう意味かわかって扱ってる。要するに程度はあれどもおおむね腫れ物扱い。
「ジェルソミーナのテーマ」と呼ばれる音楽も本当はローザのテーマなんだろう。全編に漂う虚無と喪失の原因はローザの不在。ロマの男とザンパノの対立もローザの不在の理由が原因。だいたいロマの男がちょっかい出して不慮の事故かなんかでローザが死んで、でも事故(もしかしたらカトリックなので自殺かもしれないけど、まあ不幸なアクシデント)だからどうすることもできなくてみんな誰も責められない、てなところだろう。そして、みんなの歯車が狂ってなおりきっていないところに不協和音を決定づけるローザの妹が登場する。空回りするほどのあのロマの男の軽さもザンパノの荒れ方もローザの死から逃げようとする二人それぞれの反応。軽くなりきれなくジェルソミーナにペンダントをあげたり(あれもきっとローザゆかりのものなんだろう)、登場人物がなんだかんだと言いつつジェルソミーナの世話を焼くのも登場人物のローザへの贖罪意識なんだろうと思う。
ローザの死から逃げ続けたからロマの男はああいう死に方だし、ザンパノは結局ジェルソミーナを捨てる以外の道を見つけられなかった。ジェルソミーナはジェルソミーナで「よくできた姉」に対するコンプレックスをずっと抱えていて、自分を通して関わる人々がローザを見ていることもわかって、それで苦しかったんだろうなあと、そしてあの出来事のあと、姉の死に方を知らされていないために必要以上に怯え捨てられる羽目になった。全ての抑圧から解放されるためにはああなるしかなかった。
でもローザに関する部分をバッサリきっちゃって描かない潔さが巨匠だなあと思った。必要以上に触れないからその「欠落」が浮き立つ。1954年って昭和でいうと29年だ。まだ戦後だ。敗戦国に漂う喪失や虚無や欠落をスクリーンに焼き付ける方法、象徴としての「ローザ」でもあったんだと思う。
それはそれとして、高橋さんとこの練習風景でのスケーティング見てたら天女の羽衣思い出した。なんでだろ。
更に全く関係ないのですが、常々頭の片隅にひっかかっていたキリスト教の人達がイースターぽい感じでパレードしてるシーン、何の映画で見たんだろう、フェリーニっぽいんだけどなあ、とずっとモヤモヤしてたのは『道』でジェルソミーナが家出して綱渡りを見るまでの間のシーンでした。多分10年近くひっかかっていたのがすっきりしました。すごく楽になった。
ついでに『8 1/2』も見ました。
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『ワルキューレの騎行』→『セヴィリアの理髪師』→『くるみ割り人形(葦笛の踊り)』というつなぎだけで爆笑。面白かったです。『ワルキューレの騎行』使ってる映画だって『地獄の黙示録』に比べると言及されなすぎだろう。これはもう序盤で面白がれるか全く受け付けないかどっちかだと思うんだけど、私は面白かったです。やたらと出てくるショパンのノクターン2番とか明らかに曲指定されてこれっぽくやってと注文されたであろうニーノ・ロータ風剣の舞とかも面白かったです。
前に『それぞれのシネマ』というカンヌ60周年記念の短編映画特集見たんだけども、これテーマが「フェリーニに捧ぐ」で、でもほとんど元ネタわからなかったけど異常に各国映画監督が同じ引用だろうな、ということは推測されるモチーフがあって、やっぱりそれは『8 1/2』からだった。映画監督たち身につまされ過ぎだ。でも、同業者だったら絶対ひっかかる色々があるんだろうなとはわかる。
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ここ数日、鼻歌で、これガーシュインとラヴェルどっちのピアノ協奏曲だっけ?とあやふやになりながらなぜかずっとヘビロテしてた曲があって(もやもやして調べたらガーシュインの方の3楽章だった)、さっきキム・ヨナの今季プログラム知ってびっくりした。私てっきりラフマニノフ対決なんだろ、とか思ってた。そしたら鼻歌曲だった。まったく予想してなかった。
これ。
http://www.youtube.com/watch?v=XwEnyz7iWGg
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いつも私はロシアでトレーニング積んでタラソワとかの振付けで踊るキム・ヨナを見たいし、カナダでトレーニングしてウィルソン振付けで踊る浅田真央を見たいと思っている。この二人、ほんとトレードした方が絶対いろいろ合ってると思うんだけどなあ。今季のプログラム聞いてまたそんなことを思った。浅田真央のガーシュインの方が見たいし、キム・ヨナのラフマニノフの方が見たいんだよね、単純にスケートファンとしてこの二人の特性考えると。
*1:時代背景的に絶対ジプシーって言ってると思うけど