防弾ガラスのひび割れ

ずっと衝撃が薄れないのはThe ICE関連のゆるい真央美姫特集番組(ゆるさがいい感じで面白かった)のガールズトークとかそこらへんでの浅田真央さんの恋愛話完全拒否モードだ。全身であれだけ何かを嫌がる浅田真央って初めて見た。今、あの子はこんなに脆いのかと思ってびっくりした。「真央ちゃん」に求められるものってなんだろう?と考えた時、子供みたいな無邪気さだけではもうないのか、「女子大生・浅田真央」に周囲が求めるものは恋愛話とかもなのか、それを両立させろってどだい無理な話だよなあ、でもその矛盾した二つを両立させることを強いられているのか。つらいなあって痛々しいなあって、恋愛に関する単語を誰かから言われる度に顔を曇らせる真央ちゃんを見て、泣きたくなった。あの年代の頃、楽しそうにそういう話ばかりしている人々の横で、自分に話題が振られるのをできるだけ避けたい人間だったから、なんかそういう気持ちわかるから、つらいなあって思った。
それにしてもタラソワさんは誰に対しても中世の貴婦人みたいなのを要求するよね。単に好きだからやってほしいってことなんだろうけど、女子選手ならカテゴリー関係なくそういう自分の好みを押し通す。そのことのメリット・デメリットはあるだろうし、率直に言ってタラソワさんの振付けはあまり私の好みじゃなかったりするのが多いけど(だって表現があまりにも直接的すぎなんだもの)、一方では彼女のあの押しの強さとかであの防御能力半端ない女の子の硬い殻にひびが入ったんだからたいしたもんだなあとも思う。パブリックイメージでガンと作り上げた「真央ちゃん」の裏にある浅田真央の人間くささをひきだしてきたのはすごいなあって、嫌味とかじゃなくて素直に思う。どういう人間なのか全くわからなかった等身大の浅田真央が見えかけてきた。これはほんとものすごいことだなあって、天使とか妖精とか神童とかそういうところから卒業して、一人の人間として本当にスケートと向き合えますか、ってところに今彼女は立たされている。「みんなを幸せにしたいです」って無邪気だから許されるような発言をもうできないところまで浅田真央はきてしまった。だから、今つらいんだろうなあ、と胸を痛めつつ、ここからどう化けるんだろう、って楽しみにもなってしまった。こうであってほしい「真央ちゃん」っていうのを実は私はもっていないので(そしてそれは彼女にとって不幸なことに現在の日本では少数派なんだと思う)、彼女がどうなっても「裏切られた」と感じることはない。どうなるんだろうね、やっぱり基本的にカナダ系のスケートがハマる子だと思うんだけど、武者修行としてロシアで乱取りすることでたくさん鍛えられて面白いエッセンスが入ってきてるんだなあって思ってさ、表現面での開花って今までから想像もつかない方向にいきそうで、それがとても楽しみで、突拍子もない方向にいけばいくほどきっと私は楽しくて、4年前に安藤美姫がくらったような、もしかしたらそれ以上のオリンピックシーズンのプレッシャーを今回はこの子が真っ正面から受けることになる番なんだけども、きっとそれは長い目で見ると浅田真央のためなんだよね。浅田真央のスケートのためになることなんだよね。もちろんそんなもの受けない方が幸せなんだけどさ、受けるってことはかなり前から想像できていることだから準備はできてないといけない、それでも今後の半年間で誰もが予想していた以上のプレッシャーを受けると思うんだけども、きっと彼女はそれを昇華して面白いことになるともなんか私は信じているところがあって、浅田真央に、人間としての弱さをみせる強さが備わったらその表現の説得力は飛躍的に増すじゃん?要はそういう進化が楽しみなんだと思う。

ところでFOIは土曜日の夕方にいきます。ここはA.K.I.イズムにのっとって手紙を書かなきゃいけないなあと思って諸処の用事を調整しております。手紙を書くってのもパワー使うよね。でも演技をする人が送ってくるパワーに負けないくらいこっちだって文章書くのに注ぎたいの。負けられないんだよ。A.K.I.は手紙書いてその内容朗読して録音してCD作ってそれ本人に手渡しするんだもんな、その過程を逐一公開してるんだもんな、立派なパフォーミングアーツアクティヴィストだな、とか適当に横文字のそれっぽい単語並べていってみたくもなる。きっとこの精神ってオノヨーコに通じるところもあるんだと思う。もちろん違うところも各々あるけど、でも、私もこういう人達の側の人間であり続けたいと思う。どちらかを選べというなら噂をするより噂をされる人間、陰口を叩くより陰口を叩かれる人間であり続けたいと思う。