疾風怒濤の一週間

marginalism2010-12-04

臨月なのに何にも用意してなかった弟夫婦のもとに母親が来襲。ついでに「温泉いきたい」と騒ぎ出したため、そのお守り役をおおせつかり、金出す団塊親・その財布にたかる貧乏団塊ジュニアという図式が本当に存在していることを実感しながら豪遊してきたのが11/24,25か。もう遠い昔の話のようだ。
そこのホテルに入るなりちょっとスパイシーだけど安らぐ香りがして、これが老舗の底力…!と思いました。
ポーターさんに調合きいたら檜ベースだって。つうか売店でそのエッセンシャルオイル売ってたから買ったけど、なんかもったいなくて開けてないです。

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ここのホテルのあまりのパワースポットっぷりにぼーっとしてたら、私、11/28にゲルギエフのマラ5のチケット取ってたんだと思い出してあせって会場いった。そしたらまず諏訪内シベコンの冒頭から引き込まれた。ゲルギエフの音楽ってとにかく爆音爆音言われるけどもこの人単にダイナミックレンジが恐ろしいほどの広さがあるだけじゃないかと常々思ってたんだけど、まだソリスト入る前のピアニッシモがあまりにも弱く小さい音なのにしっかり届くので感覚として想像以上でいきなりびびりまくった。全然いいホールじゃないのにここまでやれるのかとびびった。
そのあとのマラ5は泣いた。泣きじゃくった。私このチケット手配したときはまだヴァーチュー・モイアーの余韻の中だったからアダージェット目当てだったはずなのにペットのトップ?ソリスト?(あとでその人が気になり過ぎてパンフ買って楽団員調べたらTpゲスト首席だった)とホルン隊が超絶にうますぎて第一楽章の葬送行進曲のファンファーレばかり頭にこびりついてアダージェットとかあんま記憶に残らないくらい金管すごくて、なるほど4楽章でお休みいれないと金管死んじゃうからこれこうやって挿入したんだなと思うくらいにすごくて、ゲルギエフの背中見ながらひとしきり泣きじゃくった。
LSOって弦が普段どういうレベルでどれくらいの人を今回の来日ツアーに連れてきたのかは知らないんですけど、ちょっと弦が淡白だったんですよ。メカニックはきちんとしてるんだけど、歌心がちょっと足りないというか*1、だからアダージェットが記憶に残りづらかったのもあるんだと思う。日本人演奏者のノリに近かったなあれ、島国ってああなっちゃうのかな。でも、ゲルギエフそういうのにも対応しててじゃあどう聴かせるかという帳尻合わせもうまかった。どのパートが今聴き所なのかフォーカス当てて楽団員の力把握して強調したり隠したりする理知的なところもこんなに持ち合わせてたのかと驚いた。一聴するだけではその情熱的なところにばかり気がいって印象に残りにくいのかもしれないけどやっぱりほんとめちゃくちゃよく整理されてたなあ。録音だけじゃ絶対これわからなかっただろうし、テレビでもわからなかったと思う。だってテレビのスイッチャーみたいなことゲルギエフ自身がやってるから、それ以上に編集されちゃうとかえってその仕事が消えてしまう。寄りでカメラで撮ってるみたいにそのパートが浮き上がるんだ、あれどういう仕組みなんだろう。フォルテッシモがあそこまで強く大きいとキャッチーだからそればっかり取り上げちゃう人が多いのはもったいない。この人こんなに繊細にすみずみまで気を配って音楽作ってるのに。実は音が割れるかどうかの境目で止めるのがうまいから音自体は綺麗なのに。
あと、ゲルギエフの指揮している背中を見ているうちに、ロシアを背負うってこういうことなんだと思った。正直今まで見たどんなフィギュアスケーターも足下に及ばないくらいロシア背負ってました。フィギュアスケーターのそれが軽いんじゃなくて、ゲルギエフのその荷が重すぎるという話。フィギュアスケーターの境遇で度肝抜かれてたらそれがまだまだ序の口だったってこの国一体何なんだよという壮絶さでした。そりゃダイナミックレンジもあんなおかしなことになる。

演奏会後の超高速サイン会のさなか、俺のターンがきたときに「すぱしーば」っていったらマエストロがパっと顔上げてこっち見て微笑みがちにあの低音ヴォイスでキリル文字そのまんまだろう発音でスパシーバ返しをしてくれて昇天した。思いがけないほどサインもらうだけでポカポカして浮ついて、あれ?私こんなにミーハーだったっけ?と考えたんだけど、結論としてはどうも子供の頃に戻ったみたいです。
私達の世代で子供の頃から高校の部活あたりまでサッカーやってたけど今はもう見るだけになっている人が何か機会があってマラドーナにサイン書いてもらって彼の国の言葉で「ありがとう」つったら「(いやいやこっちこそみたいな顔して)ありがとう!」って渡されたらこんな感じになるだろう。陸上やってた人ならカール・ルイスだ。私にとってワレリー・ゲルギエフはそんな存在だったみたい。そのジャンルにいた頃の自分の中のヒーロー。ロシア人にとってもアルゼンチンにおけるマラドーナみたいな人なんじゃないかなもしかしたら。だからあれだけロシア背負ってるようにみえたんじゃないかな*2。だってオリンピック閉会式にさも当然『ロシアの顔は俺』といった風情でバンクーバーの会場に華々しく登場して衛星中継でつながった赤の広場の大砲にまで指示出して指揮振ってたもんな。フランス系多数の国に「1812年」ぶつけてきやがるロシアンにしびれて私それ見て猛烈にオリンピアンに嫉妬して「寝るな!」って怒ったもんなその瞬間だけ。お疲れなのに閉会式まで引っ張り出されて大変、とか思ってたのにそこだけブチ切れた。*3
正直今までサインとかもらってもどうすればいいかわからずしまい込んでばかりだったのに、今回大事に飾ってるもん。サイン額装する人の気持ちが今ならわかる。

で、サイン見てしばらくにやついてたら、弟嫁産気づいたような気がして弟にメール打ったらガチで前駆陣痛きてた。そんで産まれそうな日も伝えてみたら「姉ちゃんの予言通り産まれた」と電話がかかってきた。母ちゃん箱根に連れてってから一週間後に弟の子が誕生、すなわち弟子、いや違う、甥ができました。

あまりにも処理ができないので書いてみたら処理できるかと思ったら書けば書くほど現実味がなくて余計ぼんやりしてきました。まだ全部のことが実感わかない。合間にやってる仕事がきちんとできてるのかすらわからない。この一週間の中で一番生々しく覚えているのはゲルギエフのサイン会並ぶために購入するCD選びで人が多過ぎて自分が持ってないもので何を売ってるのかよくわからなくて、マーラー5番はまだ売ってないんですよね?9番は?9番もまだ!?大地の歌あります?そもそも出すの?じゃあ6番は!?と店員に問いつめてる自分がまるでマラヲタみたいで気持ち悪かったこと。全然マーラー詳しくないのに!しかも出張タワレコ店員さん忙しい中きちんと全部意味理解してその上げてく順番から悟った何かでテキパキ対応してくれたことでした。*4

マーラー:交響曲第6番イ短調「悲劇的」

マーラー:交響曲第6番イ短調「悲劇的」

*1:あくまでもゲルギエフ&マリインスキーと比べて

*2:フィギュアスケート観に行ってサンクトでタクシー乗ったら運転手がヤグディンプルシェンコは知らないのにゲルギエフについては興奮して話したというエピソードを聞いた事がある

*3:私見てなかったんだけど、ローザンヌでのW杯プレゼンにも出てたんだって!?前日に日本でマーラー9番振ってたのに!?

*4:結局6番買った、でもその後見たらダフクロ・亡き王女・ボレロの録音あってどうせサイン入れてもらうならそれの方がよかったなあと、列に並んでる間は悔やみ続けた