これは恋ではない

marginalism2011-04-25

2011年3月11日午後2時46分、私は在宅でもできるニュースの仕事でチームをまとめる人をしていました。最初はずいぶん揺れますね、とスカイプで話す余裕もあったのですが、途中からPC両脇にある液晶テレビ複合機をそれぞれの手で押さえるので精一杯で、前日に届いたMacBook Proを含み自分の家で一番高くて重そうなものを守ることしかできなくなりました。台所の方から色々吹っ飛んでる音は聞こえてるけど今揺れてるし仕事中だしガスもつけてないしなあ、とひとまず放っておいて、NHK点けてください、と指示したのかされたのかわからないけど、こういうことがあるとNHKをチェックするのはこの業種の仕事をしている誰もがやることではあるので、とにかく揺れがおさまったら液晶テレビの無事を確認するためにもすぐテレビの電源入れた。

その時はそのアナウンサーが誰か確認するほどの余裕はなくて、ただ一刻も早く震源地と被害状況と火事と津波原発の情報が欲しかった。そして、気象庁のサイトもうつながんないよ記事入らないよ一行でいいから通信社あたり入れてよ入れてくれたらこっちでなんとかするから、と気を急かせつつ待機してたら仙台の平原が津波に呑み込まれていく映像が出てきてあっけにとられた。政令指定都市がこんなことになるという現実感が全くなくて映画のSFXみてえええええ!!!!!とそれしか考えつかなかった。釜石すげえええええ!!!!!仙台すげえええええ!!!!!記事早く出せやあああああ!!!!!これしかなかった。あと私「クライマーズ・ハイ」の人みたいになってるううううう!!!!!と、せいぜいそれくらい。で、北海道南西沖地震で元々震度5弱までの地震経験はあるのと「クライマーズ・ハイ」の人になってるので、地震自体のダメージはその時はそれほどなく、やたら冷静に漲ってテキパキ指示を出してました(あくまで主観では)。

次のまとめ役の人には一応「被害状況がまだきちんと入ってないので、原発あたりも気をつけておいてください」と言っておいたものの、原発がここまでのことになるとは想像もつかず、ただ疲れを感じてないけど疲れてるのは確実だから薬飲んで仮眠を取った。

この災害で非常時に使えるメディアと使えないメディアや年齢層によって入る情報の違いなどが如実にわかるようになりましたけども、それとはまた別に、一つのメディアの中でも使えるものと使えないものがはっきり分かって、特に産経と読売には呆れかえってスルーしそうになってたけどやっぱりこれはきっちり怒らなくてはならないな、と思いました。本震から一ヶ月以上経った今、政権批判なんかをするのは自由です。むしろ対応のまずさがはっきりしているので批判するべきところはちゃんとしなければならないと思います。が、地震発生72時間以内なのに無理矢理にでも揚げ足をとるような記事をbotかと思うほどに紋切り型で入れてくる余力があるなら他にすることあるだろうと。72時間の意味がわからないならお前らその仕事辞めろ、わかってやってるなら給料と退職金返上して辞めろ、と、腹の底から本気で沸き上がってきた。これ紙面にも載るんでしょ、印刷用の紙の確保が難しくて薄くなってる紙面にこれ載せるスペースあるなら他にもっと有益な情報あるだろう、私だって一人でも命が救えるような身の安全を確保できるような情報を探そうと必死に記事に目を通しているのに、72時間以内は一瞬たりとも無駄にできないのに、わざわざ今やるべきではないこんなどうでもいい政権批判記事に時間とられてたら腹の一つも立てて当然だろう。イデオロギーを振りかざす時間じゃない、そんなちんけなもん乗り越えて力を合わせなきゃいけない時だってある。産経が2、読売が1のペースで政権批判の記事を入れてくる間にも、毎日新聞は特設サイトを作り、普段サービスによっては有料にしているような部分も全部無料で読めるようにし、停電情報もいち早くまとめて公に少しでも役に立つように頑張っている姿が一方で目に入っていただけに、余計腹が立った。大手4紙の中でこれからもし新聞とろうとしてる人いるなら私は毎日新聞勧めます。今も毎日新聞は積極的に被災地の町ネタ拾って、誠実な紙面作りのため頑張っているように思う。ちなみに今回の震災報道に関しては朝日は空気でした。

普段うるさい中で作業ができないので私はテレビをつけないで仕事をする派なんですけれども、さすがに今回は情報が刻一刻と変わるのでNHKUSTREAM配信している間は流しっぱなしで作業してましたら、いつの間にか横尾泰輔アナの声が待ち遠しくなっていて、最終的に平日正午・13時・18時のニュースを録画設定するヲタに成り下がりました。

元々好きなタイプではあった。登坂・横尾の定時コンビ時代は黄金時代だと思うくらいには注目していた。急激に白髪が増えていき麿人気が急騰していくのを横目に土日定時に抜擢され淡々とニュース読んでる横尾さんも気にはしていた。なんかの時にメガネ姿を見かけて以来ノーメガネの横尾アナを見る度に「普段もメガネかけろや!」と念を送る程度には思い入れもあった。登坂アナが北海道異動して平日定時に繰り上がってからすぐ消えた時、何があったんだろう?と検索かける程度には気にかけていた。復帰したらメガネ男子がデフォルトになっていたことに喝采しプロフィールその他漁る程度にはそのメガネを認めてもいた。認めるというよりど真ん中ストライクっす、と、「ゲゲゲの女房向井理メガネ+眞島秀和登場回再放送→横尾アナニュースに出くわした時は俺得過ぎて呑み込んだよだれが器官に入ってむせた。

が、今回の震災でこの人の声の魅力に遅ればせながら気付きました。横尾アナ、低音で鼻にかかってるが故に耳に刺さらないような柔らかいあたりの声なのな。震災以降、どうも聴覚が敏感というか過敏になってて、明朗快活で大きく響く声を聞くと頭が痛くなりがちだったので、横尾さんの低く染みて広がっていくような声が待ち遠しくなってしまっていた。別タブで作業しててもUst流してるところからあの声が聞こえた瞬間にタブ切り替えて声とメガネに集中して仕事手につかなくなってんの。しかも誰も怒ってくんないの。自宅作業だしNHKを仕事中に見ていてもそれは怒られるようなことじゃないの。誰も怒ってくれないから気付いたら20分惚けてた時とかどうしようかと思った。疲れてたのかな、疲れてたんだろうな。これは第一報を伝えた者同士という吊り橋効果による恋なのかな、いやむしろ不倫感覚だよな、仕事中だし奥さんいるし子供3人いるし。

つうことでこれは吊り橋効果+不倫かなと、経歴なんか調べるとほぼ同じような時期に同じあたりで大学生やってて、学生時代に好きだった人と見た目はおろか経歴や趣味がそっくりすぎてああ私の好みって歪みねえなあ、色々考えてそうで意外と考えてなくて異性関係は流されて流されて気付いたら女同士が勝手にバトってるタイプだったりするんだろうなあ、あの彼も色々ありましたが今は幸せに家庭を築いて3児の父やってますみたいになってたらいいな、などと一人20世紀ノスタルジアにハマり気まずくなったりもしてたんだけど、それだけだとどうもしっくりこなくて、もっと考えてみたところ、横尾アナに自己投影してる部分もあったみたいだ。

この人、メガネ男子として登場してきた理由って多分花粉症かなんかこじらせてもうコンタクト入れられない目の状態になったと思うんだよね。それで、ニュースを読み始める前に一旦ギュっと力を入れてまばたきするのって、目の悪い人が(ドライアイだと特に)きちんと何かを見ようとする時に一旦まばたきしてピントをあわせようとするあれだと思うんだよね。ニュースの一段落目を読み終わって口をキュっと閉めてやりすぎてアヒル口になるのも、段落の区切りという意味以外にも、仕事中に何か感情がゆらぐようなことがあった時に表情を壊さないためにやっていることだと思うんだよね。あと目つきが鋭くなるのはあの横顔にした時にわかるレンズの厚さからして仕方ない。ほんとに視力悪いと目を細めないとよく見えないことが多々ある。緊急の指示をきちんと見ようとするとああなるのはよくわかる。これ全部私の経験と指摘されたことのある仕事中の癖なんだけど、同じことやってるんだなあと思って、あれ、私、自分のこと好きなのかな?いや、このNHKの看板背負っているアナウンサーと同じところを見つけて自分のことを好きになりたいのかなあと気付いた。

ニュースの仕事といっても、私のいる所は民放キー局やそこのグループ企業の新聞社が東電本店みたいなもんだとしたらそこから下請けの下請けの下請けの、といくつ中間搾取が入るかわからないくらい下っ端の拾われたホームレスの原発作業員みたいなもんで、でもそんな底辺にいても私は私なりに考えやプライドがあって、ニュースを娯楽として消費させるような提供の仕方を随分と長い間悩みながらもそうすることによる稼ぎでなんとか生活してきました。自分のやることで自分が好きな人たちを傷つけてしまっていることに悩みながらもそのお金で生活してきました。それが今回の震災があって、初めて数字を気にしないで公的サービスの側面を押し出して作業ができるようになった時、自分のやっていることに健全な誇りを持つことができたし、だからこそ報道という自分の携わっている仕事を馬鹿にされることに腹が立ったし、他人を馬鹿にしたようで他人から馬鹿にされるような記事を入れて自分たちの価値を下げてくる報道機関にはもっと腹が立って真っ正面から怒りを感じることもできたし、数字が稼げそうという理由でそんな記事をいやいや取り上げなくてもよかったし、悩みながらもなんとかこの仕事に携わり続けて自活できていることで生きる自信がついてきていたこともわかった。大変だったけどこの事態によるプレッシャーや責任感を背負う日々は充実していたし、その日々に不思議な煌めきを感じていたと言ってもよい。そして最底辺から頂上にいるNHKのアナウンサーを見あげて、今回に限っては上も下もなくみんな一緒に闘っている気分になって、ずいぶんと励まされたんだと思う。
横尾さん、いつも冷たい目をしているとか鉄仮面とかいわれてるけど、実はそうでもなくて、原稿によってかなり読み方変えているし、いつかの15時のニュースで被災地の高校合格発表にきた女子中学生にインタビューする時なんかには、この人こんなに優しく問いかけることできるんだ、というくらい包容力のある雰囲気にびっくりしたし、昨日の18時のニュースの「被災地の中学校のバスケットボール部最後の試合(1年生の部員1人亡くなり部長が埼玉の学校に転校)」という話題の時に、原稿見た瞬間に目が赤くなって、そのニュース明けのプロ野球原稿を見失っていたので、NHKのアナでもこうやって泣くんだ、こういうネタの時は泣いていいのか、とほっとした。私にも、次はなんだよ余震?原発?東電?官房長官会見?とか思って構えてたら不意打ちで被災者の生活ネタが入ってきてこらえきれなくて泣けることがこの一ヶ月ちょっとの間に何度かあった。口に力入れて涙落として気持ちが切れないように頑張りながらモニタ睨んで記事読んでその記事を送り出す体裁を整えるようなことが何度か。彼がしていたのはあの顔だと思ったら、私もあれでよかったんだとほっとした。何かあったら一般の視聴者だけではなく同業者の注目を日本中、いや世界中から集めるNHKのアナウンサーで、中でもとりわけ冷静なように見える人でも同じなんだって。横尾さん、もともと緊張とか動揺とか感情のゆらぎがあってもあまり顔に出なさそうな人だし、鼻にかかった声質なので泣き声がわかりにくい人なんだと思う。よく考えたらこの人初任地青森・前任地仙台で、奥さんの実家も仙台で、かつて東北全体のニュース担当もしていたのだから、そんなゆかりのある場所やゆかりのある人ばかりのところがあんなことになっているのを仕事とはいえ毎日毎日何度も何度も読み上げるのは私には推し量れないほどに相当つらいことだろう。ああ、でも、仕事だから何とか気持ちを作って向き合えてたりもするのかな。少なくとも私はそうだ。あの時間に仕事を担当していなかったら、精神的にもっと手ひどくやられていたような気がしてならないや。無理矢理にでもある地点で自分から切り離さないと仕事ができないことで救われていたような気がする。

最近は事態は落ち着いてないところもあるけどニュースは落ち着いてきて(当事者じゃない出し手も受け手も飽きてきたのだろう、人間とはそんなもんだ)、また私のやっているところでは娯楽消費を求めさせるようなやり方に戻るのかもしれないけど、この充実した日々のことは忘れられないと思うし、普段ふざけたことをしていても何かあった時にはそれなりにきちんと対応できることもわかった。だからその何かの時にまた力になれるならふざけたことで自分の命をつなぐことを少しは受け入れてもよかろう、と思えるようになった。あと、私が仕事上において心がけているキャラ作りは視聴者が思う横尾アナのイメージみたいな感じでありたいということなんだなと。普段の性格じゃあんな仕事とてもできない。だから、仕事上のイメージだけでもこうなりたいんだな、とも。

横尾さんは今回の件で露出が増えて名も上げたため、きっと麿さんの後釜として札幌放送局が狙っていると思うので、北海道なら奥さんも一緒に呼んで夫婦漫才やらせる勢いで待ち構えていると思うので、北海道とはそういうところなので、登坂アナが東京に呼び戻されたら札幌に一家で転勤して2,3年思う存分スキーやってそんで勢いで家族も更に増やしてくればいいと思う。そして後々ニュース7の平日・土日でまたあのコンビを見られたらいいなと思う。ついでにあの声でセルジュ・ゲンスブールの曲でも歌ってくれたら本望です。北海道なら、北海道ならきっとなんとかしてくれる…!

それにしてもちょろちょろ名前あげると私の好みのタイプがわかりやすすぎですね本当なんかすいません。向井理眞島秀和横尾泰輔アナウンサー以外ではあと西島秀俊田中圭も好きです。田中圭以外は声質も好きです。チェロというか音域的にはあそこらへんでバスクラ的な声質ですね。できれば身長は163-167cmの間がいいです。肩幅とか狭かったりすると最高です。「おひさま」のキャスティングは「ゲゲゲ」意識しすぎて(向井理田中圭柄本佑柄本時生)ちょっと私の好みばりに露骨だと思います。