喝采

「へー、岡崎京子好きなんだ?何が一番好き?」「東京ガールズブラボー!あ、でも、まだ単行本になってないけどチワワちゃんって短編もすっごくいいよ!」というような会話を学生映画撮影の合間に交わしていた人の訃報をテレビニュースで知った。
私の通っていた大学出身の有名人はちょくちょく見かけるけど、同時期に在籍して交遊を持っていたテレビで見かけるくらいの有名人は彼だけだった。
『チワワちゃん』の主人公のような気分でずっと訃報とそれに対する反響を眺めていた。私の知っている彼と「有名人としての彼」のズレがうまく収まりどころを見つけられずうろうろしている。

芸能人になるということ。有名人になるということ。沢山の知らない人が彼の死を悼んでいる。テレビで見る有名人達が次々とコメントを出す。

私は知らなかった。有名人になるということがどれだけ危険なことか。彼が有名人になるまで知らなかった。
誕生日が近いね、とか、ノート?いいよ貸すよはい、とか、そういう他愛もないやりとりをするような同級生だった彼が大学卒業後、どうやって芸人として歩んでいたのかもメディアを通して断片的にしか知らない。そもそもその芸人が彼だとは、友達が教えてくれるまで気付かなかった。

学生時代の「まっすぐで暑苦しくて空回りしつつも努力家で素直でニコニコしてる人」という淡いイメージしか浮かばなくて、いつも一緒にいた相方の男の子の方が私はよく喋っていたので、ニュースを知ってからその相方の男子がどうしてるだろうか、と遠くからだけどずっと気を揉んでいたら、彼のツイートがまとめられているのを見つけた。これは私が知っているたけちゃんとやすくんとトミーの物語。

竹内幸輔さんの、相方桜塚やっくんとの思い出
http://togetter.com/li/573718

たけちゃんのツイッターhttps://twitter.com/takeutikousuke)今見に行ったらまたちょっと増えていた。

竹内幸輔@10/26.27は朗読劇!
‏@takeutikousuke
恭央も俺も中学生の時に芸能人になるって決めて、その勉強のために入った日芸で出会って、俺は在学中に入った最初の事務所でうまくいかなくて、んで辞めてぼーっと生きてて演劇とかして現実逃避してて、恭央が誘ってくれて引っ張ってくれなかったら今の俺はない。

https://twitter.com/takeutikousuke/status/389065621373071361

この時代の感じは私も知っている感じだ。文芸学科にいて編集者志望だった当時の私は、芸能人を目指す彼らの熱さに少し後ずさりながら眩しく思って見ていた。

それで今日、私達の世代の日芸生にとっては特別な存在だった爆笑問題のコメントを見つけた。

やっくんは自分と似ていた…爆問・太田光「死にざまは芸風通り」

(前略)
また、日大芸術学部の先輩にあたる司会の「爆笑問題」の田中裕二(48)は「努力家でなんでもできる人だった」と振り返った。また、太田光(48)も「こんな汚れですいません」とあいさつされたことから始まり、「彼の芸は空回りの芸。食ってかかることから始まる。出たとこ勝負のところがあった。俺も似たようなところあるから」と自身の芸を重ね合わせてやっくんを追悼。「彼の詳しくはわからないが、死にざまは芸風通りだと思った」と悲痛な表情で心境を語った。

http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2013/10/13/kiji/K20131013006802010.html

爆笑問題の知っている桜塚やっくんと私の知っている演技コースのやすくん*1がそれほどずれていなくて、爆笑太田先輩に「似ている」なんて言われたら幸せだろう、と思ったら、事故のニュースを知ってから初めて少しだけ泣けた。

たけちゃんの思い出ツイートを読んでいたら懐かしくなったので、学生の頃のようにゆるい感じでポツポツ思い出話などたけちゃんやトミーとしたくなりました。あと、私はトミーにちょっと謝らなきゃならないこともあるので、各々の人生を進めて、いつかどこかでなんとなく再会できたらいいなという願いを込めてこの文章をwebに置いておきます。

チワワちゃん (単行本コミックス)

チワワちゃん (単行本コミックス)

*1:暑苦しくてまっすぐな感じが絶対演劇学科と思って疑いもしなかったんだけど、有名人になってから映画学科の演技コースの方だと初めて知ってびっくりした