今でいう堀江って人

あの人みたいに阿部和重のことを思ってたんだよね、あの頃。
文学に対して真摯な態度で臨んでいる若い小説家がいないと思ってた。
汗をかいて作り上げられている文学は渋谷系文学に入れてもらえなかった。
その世間を舐めた文学が世間で一定の評価を得ていることに耐えられなかったのが当時の私であります。
松浦理英子尾崎翠の小説が好きな人間にとって、その頃もてはやされていたのは魂を削っていない文学としか思えなくて、そういうものに「文学」という言葉を使うのすら嫌だったんだ。
汗をかいてっていうのも、プロレタリアートという意味ではなくて。
文学ってチョロいんじゃん、って空気が蔓延していて、その時代に耐えられなかったんですよね、ただ単に私が。
あの頃もっとも魂を削っていた表現は漫画に多かったように思えたので、漫画ばっか読んでいたんだと思う。