アンコールが３回

marginalism2009-02-14

ラファウ・ブレハッチピアノリサイタルに行ってきました。
http://www.japanarts.co.jp/html/2009/piano/blechacz/index.htm
オペラシティのタケミツメモリアルが会場のチケットをとってよかったです。

常々ラファウ・ブレハッチ＝小塚崇彦説を唱えているのですが、今まで誰一人そのニュアンスを汲み取ってくれる人がいません。
前半のモーツァルト、ベートーヴェンのあたりでもっと背中から弾いて歌えたらこの人はものすごい怪物になるだろうなあ、と、ちょっと歯がゆく見てて、その歯がゆさをよく知ってる何だっけこれと考えるまでもなく、ああちょっと前の小塚崇彦の背中や肩から上を見て思ってることだったと。あまりにもそのまんますぎて逆に思いつきませんでした。しかも出かける直前に四大陸のフリー見てたつう。端正で癖もなく、気品があって、足元・手元の技術（スケーティング・指のコントロール）についても申し分ない、でも、もっと背中を柔らかく使えた時のこの人達の表現力を想像するとまだまだ歯がゆくなるという。小塚崇彦もラファウ・ブレハッチも本人比ではよくなってるんだけど、もっともっとできるだろう、とわかりきっているので、こっちがもういいよ、といえるくらいまでできると思うので、もっと待ちたいなと思う。

あ、でも、ブレハッチは後半、特に『英雄ポロネーズ』は尻上がりにすごかったです。なんだろ、この人、いわゆるティピカルなショパン弾きのイメージのロマンチックな感じというか大げさに歌うというか下世話にいうと『モテ』を求めてる感じはないんだけど、やっぱりショパン弾きなんだと認識せざるをえない。ショパンのポーランド人としての魂なのかなあ、素朴な部分を表現することに非常に長けているんじゃないかと思った。派手なショパンじゃなくて、彼の内にあるポーランドをきちんと掴んでその風土とか大地に根ざした音だなあと思う。そんで『英雄ポロネーズ』あたりだとそれなりに背中が使えているので、本人もやっぱりショパン弾きやすいんだろうなあと、いや、ショパコン優勝者だから当たり前っちゃ当たり前ですけど、恋愛沙汰が絡まない（こういうとこも小塚くんと共通、恋愛沙汰絡まない『Take5』の方がまだあの子やりやすそうにしてるから）ショパンの聴きやすさっていうのがとにかくいいなあと思った。ショパコンのガラで聴いた『英雄ポロネーズ』より本人比で軽さの代わりに威風堂々とした雰囲気が出始めていたので。背中も控えめに歌っていたし肩の力もやや抜けていたし、なんつってもピアニストとしては23歳ってまだノービスみたいなもんでしょう。何事もなければあと40年か50年くらい楽しめるでしょう。そういう点でものすごいですよ。どう育つのか、とまだ見守らなきゃいけない年ですよね、日本の学年でいうと中野友加里や高橋大輔と一緒だから（ちなみにブレハッチさんはスケート年齢でいうと85年6月30日生まれという誕生日がギリギリなとこにあるため一個上になる）なんかそういう感じで考えがちだけどピアニストの時間はフィギュアスケーターの時間と流れが全然違うから、これからどんどん熟成されていくのがほんと楽しみです。

そんで、アンコール３回あって、最後に弾いてくれたのがドビュッシーの『月の光』で。私、ブレハッチのドビュッシー収録アルバム欲しいんだけど、まだほぼ無名の頃に出してて今のレーベルじゃないんでなかなか見つからないんですよ。会場で売ってるかなあと思って見に行ったけどやっぱりグラモフォンレーベルのものしか売ってなかった。そんでちょっとしょんぼりしてた。もちろんきょう生でブレハッチが弾くドビュッシーを聴けるとは思ってなかった。前のツアーの時に『版画』やったらしくて行かなかったことを悔やんでいたりもしたので、それがタケミツメモリアルで『月の光』ということで全てとんで、ここにいてよかったとほんとに思った。
オペラシティコンサートホールタケミツメモリアルは天窓があるので、夜空の下で『月の光』を弾く形になるので、うわあああってなった。うわあああってなったまんまうっかりCD買ってサイン会の列に並んだ。ブックレットみてたらもうこのページしかないだろ、というとこにサイン入れてもらったので満足です！あとは小塚崇彦エキシビションの新衣装『ラストダンスは私に』を待つばかりです！
それにしてもタケミツメモリアルほんと音響いいね。拍手が音響がよいために無駄に鳴り響いて観客のテンションまで即座にわかってちょっとこわいくらいでした。武満徹が深く関わってて音響が悪いわけはないのだけど、前に入った時はこんなにすごいと気付かなかった。